個人情報保護法、J-SOX法による情報漏洩防止、ITシステムの内部統制が強く求められる中、
データの廃棄作業は、特に気にかかる。地方自治体にとって外部へのデータ流出など、万が一に
もあってはならない。扱うデータには限りなく個人情報が含まれるからである。そこで静岡県東
伊豆に位置する伊東市が採用したのが、万が一にもデータ流出の恐れがない「データ消去安心サ
ービス」である。究極のデータ廃棄方式採用の「伊東市」で聞いた(編集部)。

条例に基づいたシステム化

 本誌 伊東市のシステム化の概略経緯を伺えますでしょうか。

 佐藤 私ども伊東市が最初にコンピュータ導入をしましたのは昭和43年のことで、固定資産税、市
民税、軽自動車税、国民健康保険税、給与、水道料金などからシステム化を推し進めてきています。

54年には、「電子計算組織の運営に関する条例制定」をし、取扱い規定を明確にしたコンピュータ化
を進めてきています。

57年には、オンライン処理に着手し、市民課窓口での各種税証明書発行を開始しています。

以上は、いずれもメインフレームを中核にした基幹系業務システムの展開ですが、60年になって、情
報系処理のシステム化にも着手することとし、ワープロ、パソコンの導入をしています。

以来、基幹系、情報系の二系統のシステム化を推進しています。

平成9年には「伊東市個人情報保護条例」の制定に伴い、先の運営に関する条例を廃止し、新たに「伊
東市電子計算機組織の運営規定」を制定し、それに基づくシステム運営をしてきています。

業務的には、住民基本台帳ネットワークへの参加をするなど拡張されてもいますし、システム環境的な
対応としては、個人情報保護法が施行される以前より、市の条例に基づいてセキュリティ対策の強化に配
慮してきています。

データ廃棄に万全を期す

 本誌 「データ消去安心サービス」を採用した理由、背景を伺いたいと思います。

 佐藤 これまでの経緯からもお解りいただけると思いますが、私どものコンピュータ運営は、すべて市
の条例に基づいたものでなくてはなりません。

特に、現在のコンピュータシステム運営規定では、個人情報保護を重要な課題としています。

どの自治体も同じだと思いますが、取り扱っているデータは限りなく市民の皆さんの個人情報につなが
るものばかりです。

今回、破棄の対象になったデータは、長いシステム化の歴史経過の中で、今日では使用しなくなった古
いメディアに格納されたままのものです。

必要な情報は、新しい世代のメディアに書き換えられたりしていますが、いかに使用されなくなったデ
ータとは言え、一般ゴミと同じ方法で処分するわけにはいかないということで悩んできたのです。

本誌 特に悩んだのは、どういうことでしょうか。

佐藤 一般的なゴミ処理では、廃品業者への依頼が考えられますが、データの場合、その運搬途上での
「まさかの事故」があり得ると心配してきました。

しかし今回採用することにしました「データ消去安心サービス」の場合、大きな理由は2つあります。
まずひとつは、データの消去作業を、当方に直接来てくれて、当地で作業をしてくれるということ、つま
り運搬する工程がないということです。

 いまひとつが、目の前で燃焼処理をし、その結果を見せてくれるということで、破棄したデータメディ
アから個人情報が絶対に漏洩しない状態を確認できるということからでした。

  安全を確認、安心を確信

 本誌 これまではどういう処分をしていたのですか。

 佐藤 テープメディアにつきましては、システム部門員が細かく裁断した後に、市の焼却炉に持ち込み
焼却処分していました。

外部の廃棄処分業者に依頼したことは一切ありません。

本誌 結局は、裁断作業を含めまして、内部の処分コストを必要とされていたのですね。

佐藤 表向きは内部コストということですが、ご指摘のように、目に見えない廃棄コストがかかってき
ていました。

しかし環境問題など、新たな問題が指摘されるようになりまして、焼却炉での処分が問題だとされるよ
うになり、コストだけでない配慮も必要になり、市としてこれも大きな課題になってきていました。

このほど採用致しました焼却処分方式では、焼却炉に窒素ガスを注入することで無酸素状態にする焼却を
することから、単純に焼却する場合に比べて
CO2の排出量が3分1になるということも、大変魅力を感じ
た点です。

本誌 しかも、その3分の1のCO2排出量をカーボンオフセット制度で相殺し、伊東市としてはCO2
出量がゼロになるというのはご存知でしたか。

佐藤 処分方式を検討していた当初は詳細について知りませんでしたが、処理方式の段取りを聞いてい
る段階で説明を受け、感動致しました。

将来的に環境問題がどのように推移し、カーボンオフセット方式がどのように定着するかは判りません
が、国連を中核に、日本政府も取り組んでいる全地球規模での温暖化防止策の一翼を担う運動として改め
て関心を高めているところです。

本誌 処理結果を見て、どういう感想をお持ちですか。

佐藤 処理が開始されてほんの数時間後、原型を留めない形に処理されたデータメディアを確認でき、
本当に安心感を持って見ることができました。

誰が見ても、処理後のメディア状態から情報漏洩は絶対に起こらないということが確認/確信できたか
らです。

今回、処分をお願いしたメディア以外にも、小型化しているけれども格納される情報量が膨大なメディ
アが開発され活用が進んでいます。従来のメディアのように量的にかさばらないものばかりです。

もしかすると今後は、複数のユーザー組織が共同でメディアを持ち寄り、本方式を採用できる処分量を
確保した上で依頼することも考えられるなと思っています。



グリーンITを実践する「データ消去安心サービス」
  カーボンオフセットで国のCO2削減目標に貢献

コンピュータ産業界では、世界的規模でグリーンIT運動の推進を目指し、省エネタイプのITシステム製品/
サービスの開発に余念がない。

イメーションが提唱するMLCM思想に連動している「データ消去安心サービス」には、COJの提供するCO2
削減プログラムが活用されている。データ消去安心サービスを利用した企業等ユーザー組織は、京都議定書に
基づく国の
CO2削減行動に貢献できると注目を集めている。

データ消去安心サービスとは、データ記録メディアの最終工程であるデータ消去作業を確実にするために考
案されたデータ消去処理サービスであり、不要になった記録メディア媒体を、窒素を充満させた炉で燃焼し炭
化させることで、データ内容の完全消去を実現する。しかもこの作業の過程で排出される
CO2の量を通常の3
分の1に削減するとともに、その
CO2をカーボンオフセットにより相殺し、同サービスを活用した企業・団体
CO2排出をゼロにしてくれる。